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| インタビュー 2009/07/17 |
ジャーナリスト佐々木俊尚さん(1) 2011年、メディアの政権交代が始まる |
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情報流通の主導権を握るプラットフォーマーであるグーグル、アマゾン、アップルのようなグローバル企業が世界的なプラットフォーム競争を繰り広げている00年代。未曽有の広告不況に加え、2011年からスタートする地上波デジタル放送により国内メディアの勢力図は激変、既存マスメディアはマスではなくなっていく。 コンテンツとそれを運ぶコンテナーを統合する垂直統合ビジネスモデルをもとに、トータルパッケージとして情報を独占配信してきたマスメディアは、広告や課金のボトルネックを握るプラットフォーマーへの一コンテンツ提供事業者としてのビジネスモデルの変化を迫られつつある。 今回は、情報化社会で働くマスコミ人必読の書とも言われる『ネット未来地図』『フラット革命』を発表し、ネットジャーナリズム論をリードする気鋭のジャーナリスト佐々木俊尚さんが登場。 7月22日に新刊『2011年新聞・TV消滅』(文春新書)を上梓する佐々木俊尚さんに、若きジャーナリストとジャーナリストの卵たちが考えていくべき戦略について聞いた。
●新刊『2011年新聞・TV消滅』内容紹介大手新聞社やテレビ局の開業以来の赤字転落など、マスメディアの衰退が言われています。ネットの面白さに圧(お)されたから、あるいは、昨秋からの金融恐慌のあおりが主たる要因か。「答えはノーだ」と本書の著者、佐々木さんは言い切ります。インターネットが躍進したことによるビジネスモデルの変容こそが、最たる原因であると。倒産の危機に瀕しているニューヨークタイムズの例をはじめ、アメリカで起こっていることは必ず2、3年後に日本でも起こる。日米の事例を駆使しながら筆者が提示するビジョンは、マスメディアの将来を予見するに留まらず、新しいビジネス自体の根本を衝いてスリリング。
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プロフィール 佐々木俊尚 1961年兵庫県西脇市生まれ。愛知県立岡崎高校卒、早稲田大政経学部政治学科中退。1988年 毎日新聞社入社。岐阜支局、中部報道部(名古屋)を経て、東京本社社会部。警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人や誘拐、海外テロ、オウム真理教事件などの取材に当たる。 1999年アスキーに移籍し、月刊アスキー編集部デスク。2003年、退職し、フリージャーナリストとして主にIT分野を取材している。 現在、メディアとネット社会の変化をレポートする有料メールマガジン「ネット未来地図レポート」を好評配信中。
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●2011年までに、マスメディアが「CHANGE」すべきこと
-なぜ今、2011年のメディア状況について書こうと思ったのでしょう?
まず1つ目に、昔から、アメリカのメディア業界で起きていることが3年遅れで日本で起きると言われています。去年ぐらいから急激にテレビと新聞が崩壊し始めましたが、その兆しは3年ぐらい前からあった。2005年時点でアメリカのテレビ業界の広告収入が減少し始めたという報道がありましたが、日本のマスメディアもまさか今のような状況に陥ってしまうとは誰も予想していなかった。 アメリカでは今年あたりから、新聞社をはじめとする大手のメディア企業がどんどん倒産し始めてきている。3年後に日本で同じことが起きるという従来の流れでいうと、2011年には日本でも同じようなことが起きる可能性が高いでしょう。大手新聞各社は昨年、日経以外軒並み赤字に転落しましたよね。赤字幅は今後も拡大していく一方であろうし、その中で足腰の弱い一社が倒産してしまう可能性がおおいにある。
2つ目に、ブログ論壇を中心に昨年ぐらいからマスメディアに対する批判が激しくなってきたことがあります。これにはあんなにくだらないものばかり作っているからダメになるんだという情報の質の部分での批判が多い。 ところが、今回の事態は情報の質や内容そのものとはあまり関係がなくて、あくまでもビジネスモデルの問題なんだと思うんですね。例えば、アメリカの新聞社の言論は決してレベルの低いものではないのに、名門紙ですら倒産寸前になっている。
3つ目に、プラットフォームのシフトがますます激しくなってきているということが挙げられます。 今起きていることは、メディアのプラットフォーム競争に他ならないのですが、日本のマスメディアの人々はプラットフォーム競争が起きているんだという感覚自体が乏しい。いまだに、モノづくりをちゃんとやっていればいいじゃないかという幻想に囚われている。この3点がこの時期に出版する理由です。
―マスメディアの認識と現実とのギャップを早く埋める必要があると。
このギャップはやばいでしょう(笑)。僕もマスメディアの仕事をしているのであまりひどくは言いたくないんだけど、もうそんなことを言っていられる時代ではなくなってきた。
―新聞社がDSの任天堂、Kindleのアマゾンといった既存の有力プラットフォーマーといち早く提携しコンテンツ提供事業者として存在感を示していく可能性はどうでしょう?
どこと組むかによるでしょうね。世界的なプラットフォーム競争の中で、コンテンツ提供事業者は、最終的にどこが生き残るかに大きく左右されます。任天堂も当然、グローバル市場でのコンテンツプラットフォーム化を狙っていると思いますが、ゲーム分野はもちろんのことゲーム以外の分野でプラットフォームとして生き残っていける保証はどこにもない。Kindleに関して言えば、amazonが販売手数料として70%取るわけですから新聞社にとって旨みがあるビジネスモデルにはならないでしょう。それに対し、世界中で騒がれているgoogleブックライブラリーにしても手数料として35%抜かれる。いずれにしても、価格決定権や広告販売権をプラットフォーム側に握られてしまうわけだから、垂直統合モデルで儲けてきた新聞社や人数の多い大手出版社にとっては不利なビジネスモデルであることに違いはないでしょう。 追随するSonyやappleの動きも含めて電子書籍配信ビジネスに今後どういったサービス競争が展開されるかはわかりませんが、googleとamazonなどによる世界市場の覇権争いがさらに激化していくでしょう。マスメディアはうろたえるのではなく、最終的にどこが勝ち残るのかを冷静にみていく必要がありますね。
―コンテンツの自由競争が激化していく中、日本のマスメディアは生き残れるのでしょうか?
プラットフォーム利用者側からみた場合、伝統企業としての新聞社や出版社のブランドや抱える社員数の大小はまったく価値を持ちません。マスメディアが作った記事をふだんよく使うプラットフォームに流れるコンテンツの一つとしてとらえた場合、単に検索できてすぐ読めるから便利ということ以外の価値はなにもないですから。 情報の質が大事なのは当然として、ビジネスモデルの変化にいち早く対応していく必要があるでしょう。
―朝日新聞がKDDI、テレビ朝日と組んで6月11日から始めた、au携帯電話向けに利用者の好みに応じたニュースや情報を素早く配信するサービス「EZニュースEX」についてはどう思われますか?
ニュース配信のプラットフォームが完全にgoogleやヤフーになってしまっている現状の中で、新聞社がただのコンテンツ提供者になってしまいかねないという危機感の表れでしょう。新聞社がコンテンツ提供事業者として生きていく道もありますが、そうするとこれまで享受してきたおいしい部分がプラットフォーム側にとられてしまう。だから新聞社はケータイチャネルにおいて、WEBで失ったプラットフォーマーとしての力を取り戻したいはずなんです。 今回の朝日新聞の取り組み自体は、新聞社がプラットフォーマーとして成功した事例が世界的にもない中で、意味のある試みだと思いますね。 新刊の『2011年新聞・テレビ消滅』でも、新聞社のデジタル配信に関する課題について触れていますが、auのEXに関して言うと斬新性はあると考えています。地下鉄を使っている都市部のビジネスマンなどに最新ニュースをプッシュ配信するという点にニーズがあるんじゃないでしょうか。これからのニュース配信は検索ではなくてレコメンデーションモデルだと思っているのでその流れに沿ったサービスではあるでしょう。物足りないのはインターフェイスですよ。アサヒ・コムとあまり変わらない。朝日新聞の人はWEBサービスというとアサヒ・コムだと連想してしまうようです(笑)。
―出版社の人がWEBメディアを雑誌の電子版と勘違いしているのと同じですね。
もう少しパーソナライズされたレコメンデーションサービスという点を意識してほしいところです。 タンブラー(ウェブスクラップブックサービス)みたいな方向性もあるでしょう、ユーザー個人がWEBで見つけたテキストや画像・動画を自由にコピペして貼り付けたり投稿できるサービスですね。当然、著作権侵害との兼ね合いも考える必要がありますが、改ページせずにスクロールしながら見ていく雑誌に近いイメージのサービスが作れたら面白い。ユーザーの集合知による雑誌のようなサービスであればニーズが十分にあるでしょう。 新聞もタンブラーのような技術を活用することで、次から次へといろんな情報がランダムに流れてくるような仕組みや誌面を実現できたら楽しいんじゃないかと思いますね。
―ケータイで需要がある情報は芸能ニュースと言われていますが、コンテンツ供給面の課題はなんでしょう?
10代から20代の若年層中心のケータイの利用者層はテレビの視聴者層に近い。新聞社が不得意な芸能・スポーツなどエンタメ系の無料コンテンツを大量に用意しないとウケないという課題はあります。ただし、アメリカの都市部のビジネスマンのようにスマートフォンがモバイルツールの主流になっていく可能性がある。iPhoneの3G S版にも人気が殺到しているようなので、スマートフォン化の流れの中でビジネス情報をモバイル端末で摂取するニーズがさらに高まっていくのかもしれません。 それとエンタメ系の情報ニーズが高いのはWEB空間でも同じなので、エンタメ情報が主体のプラットフォームの中にいかにそれ以外の情報をランダムに混ぜていくかがキーになっていくでしょうね。 従来の編集局主導の誌面ではなくパーソナライゼーションとレコメンデーションを適切に組み合わせる情報のアーキテクチャーが重要だと思います。
―地方読者はライススタイルや情報の優先順位が都市部の読者とは異なると思います。地方支局の記者がご当地ならではの情報提供をケータイでプッシュ配信できたらニーズがありそうですね。
そうですね。ただし問題は、中央も地方紙も読者は高齢化していることでしょう。40歳半ば以上ぐらいになると中央と地方の読者の文化的な違いはあまりないのですが、若年層においては中央と地方で文化的な差異は大きいと言えます。利用しているSNSで例えると、中央のユーザーはmixiで地方のユーザーはモバゲーを使っている傾向がある。都市部のユーザーの情報源がインターネットであるのに対し地方のユーザーの主要な情報源は今もテレビでしょう。都市部とはまったく違う、ある種のロードサイド文化圏がそこにある。しかし、地方紙の記者がそうした文化的差異をどこまで捉えられているかは疑問ですね。
―地元ネタをこまめに拾っている地方紙記者が有利なんじゃないですか?
地方ローカルという物理的な事象は捉えてはいても、文化的差異や価値観の差異といった世代間によって差異のある問題についてはきちんと捉えられていないといっていい。その点では中央の新聞記者も地方の記者も変わりません。
―世代といえば、全共闘を始めとする都市部の昭和文化を懐古する団塊世代向け記事が最近目立ちますが。
確かに最近、全共闘の記事が多すぎる(笑)。明らかに、主要読者層である高齢者向けの情報をどんどん増やしている傾向がありますね。もっともこれは新聞に限らず老舗雑誌も同じ流れにあるでしょう。典型的なのは、「死にかた」と「太平洋戦争」の2本柱で誌面を回している「月刊文藝春秋」。主な読者層は70代から80代ですから。そうしたことから考えると、今の新聞が高齢者向けにシフトしていっているのは短期的な戦略としては正しい。但し、高度成長期や全共闘時代に思い入れのある読者がいなくなってしまう20年後には誰も読む人がいなくなるでしょう。右肩上がりの時代に特に思い入れのない下の世代が定年になった時に、今の新聞を読むかといったら読まないかもしれない。ただし、現在の新聞社幹部は自分たちが定年した後のことまで考えていないでしょう。
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