毎日更新!!総合図書大目録

世界最大の電子書籍大目録

電子書籍販売点数39043点

新世紀メディアパプリッシャ― インタビュー

新世紀メディアパプリッシャ― インタビュー
最近のインタビュー一覧 アクセス数ベスト10
前へ

連載目次へ
 
インタビュー 2009/06/24
ブック・コーディネイター 内沼晋太郎さん(1)
本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本


内沼晋太郎
本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本


出版関連の仕事はルーティンワークだらけでつまらないと失望してる本好き必読企画!

今回は、20代にして「ブック・コーディネイター」という新しい職業をつくった、内沼晋太郎さんが登場。
大学時代、『SPUTNIK』『TOKION』といったインディペンデント雑誌に刺激を受け、インターネット連動型カルチャー誌を作るユニットを立ち上げた内沼さん。新卒時に入社したブックフェア主催企業を3ヶ月で退社後、千駄木「往来堂書店」で書店実務を学びつつ、自ら「ブックピックオーケストラ」というネット古書店メディアを開設。その後、「本とアイデア」のレーベル『numabooks』を設立し、アパレルショップでの書籍販売や本との出会いを演出する展示やイベントを続々と展開。企画立案から実行までのタテの推進力に加えて、業種をまたいだヨコへの展開力を併せ持つニュータイプのインディペンデントpubulisherだ。
そんな内沼さんが、本好きの若者に向けて書いた『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』の帯には、こう書かれている。

「最近の本はつまらない、と嘆いている人ほど読んでほしい。」
「仕事はつまらないものだ、と諦めている人ほど読んでほしい。」


現在、本の仕事に就くことや本に関わる仕事を、希望を持って続けることが難しくなりつつある。この本で内沼さんが提示したのは、そんな若者にとって新たな希望となる新たな職種と新たな働き方がすでに存在しているという事実。
ブック・コーディネイター業を通じ、本そのものの魅力や書棚空間が持っていたメディアとしての可能性を再発見した内沼さんに、この職業の可能性と課題について聞いた。



 プロフィール
 内沼 晋太郎

numabooks代表。ブック・コーディネイター、クリエイティヴ・ディレクター。1980年生。一橋大学商学部商学科(ブランド論)卒。某国際見本市主催会社にて出版関連のイベントを担当後、独立。2003年、本と人との出会いを提供するブックユニット「ブックピックオーケストラ」を設立。2006年末まで代表をつとめる一方、「本とアイデアのレーベル」として「numabooks」を設立。
ブック・コーディネイターとして「TOKYO HIPSTERS CLUB」(株式会社ワールド)、「TOKYO CULTUART by BEAMS」(株式会社ビームス)などのセレクトショップで販売する書籍のセレクトを中心として、書店のプロデュースやコンサルティングなど、本を媒介とした空間ブランディングをメインに様々な業界で活躍。また、ウェブディレクター、編集・ライター、DJとしても活動し、展覧会も多数企画・出展している。
公式サイトhttp://numabooks.com/

著書
本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』(朝日新聞出版)
「ブック・コーディネーター」という仕事をつくった28歳の著者が、豊富な図版で立体化した「本」のアイディア・ブック兼、ロスジェネ世代のインディペンデントな「仕事」論



●本=ブランディングメディアとしての可能性を探る職業


―ブック・コーディネイターとはズバリどういう仕事なんですか?

肩書きがないといけないと思ってあとからつけたものなので、明確に「こういう仕事です」といえるようなものはないです。ただ、きっかけになったのは、本や本棚というメディアを通じて、小売店などの空間のブランディングを考える仕事です。例えばカフェやアパレルショップの壁に絵やオブジェが飾ってあることがありますが、そこにどういう絵やオブジェが飾るかということによって、そのブランドがどういうブランドなのか、というメッセージを表現することになるわけですよね。そのメッセージを伝えるのに、そこに絵やオブジェではなく、本が並んでいたほうが伝わる場合があるだろうということです。なぜなら本は、その中に絵やオブジェよりも具体的なメッセージを含み、それが表紙や背表紙にタイトルという形でことばで凝縮されていることが多いからです。本というのは、その空間が持つコンセプトを表現できるメディアなんですよね。

―つまり、本を通じた空間ブランディング職ということですか?

そうですね、本屋以外の空間に本を置くことを考える場合、その本が本来持っているメッセージと、プロダクトとしての本が持つあらゆる魅力とを、そこにある他の要素と組み合わせて見せていくことで、その空間に訪れる人に伝えたいブランドを伝えていく、という要素抜きには語れません。


―本そのものをメディア(媒体)として捉え始めたきっかけは?

僕は学生時代にカルチャー誌をつくろうとしていたんです。結局創刊しないまま終ってしまい、イベントやアートプロジェクトみたいなことに手を染めるようになるんですが、その雑誌の流通について考えているとき、佐野眞一さんが書いた『誰が本を殺すのか』を読んで、出版業界の仕組みはなにやら複雑で面白そうだけど、業界としての未来はあまり明るくないことを知りました。専攻がブランド論で、いろんなケーススタディを目にする中で、出版業界が体質的にとても古い業界だということも感じました。
そうして就職活動をするとなったときに、本に関わることはしたいと思いながらも、名の知れた出版社や力を持っていそうな取次、書店などに入社しても、ただその古いシステムの中に飲み込まれてしまうだけだと思ったんです。最初に入った会社もそういった理由で選んだのですが、結局辞めることになったときにも、出版業界全体はともかく、スキマとしてやれることはまだまだあるんじゃないかという可能性は感じていました。

―出版業界と他業界とのスキマにまだ見ぬ可能性を感じたと。

具体的には描けていませんでしたが、とにかくその何かを探すために、新刊書店の「往来堂書店」でアルバイトとしてしばらく働かせてもらいつつ、仲間を集めて「ブックピックオーケストラ」という名前でネット古書店を立ち上げました。
WEBマガジンのような体裁にして、一冊の本を売るのに途方もない手間をかけて紹介したり、イベントや展覧会などで古本との新たな出会い方を提案するような試みを行っていました。

―ネット古書店もコンテンツメディアだと位置づけたわけですね。

この活動を通じて、いろんなイベントやいろんな人との出会いがありました。中でも、北尾トロさんらが主催する「新世紀書店」というネット古書店イベントに誘われて参加したことは大きかったです。それがたまたま「TOKYO HIPSTERS CLUB」の担当者との出会いとなり、最初はぼくがそこで売っていたような古本を仕入れたいという相談だったのですが、いろいろ話していくうちに担当者が必要だということになり、そのショップに置く本の品揃えのコーディネートを頼まれました。それがのちに自分がブック・コーディネイターという肩書きで仕事を始めたきっかけですね。


(C)Ayaco Nakamura


その後、その仕事をご覧になった他の方からも本のコーディネートをしないかと声をかけて頂いて。その時に、こうした潜在需要がたくさんあるだろうと確信しました。

―「異業種小売店向け小規模流通コーディネート」サービスのことですか?

ええ。まだ試行錯誤している段階なのですが、これは本を売りたいという異業種の小売店さんに本を流通させる仕組みを提供するサービスです。
通常、本を売ろうとすると取次の書籍口座を開設するのにはかなりの額の保証金が必要になります。かつては書店はリスクが低く安定した商売でしたが、今は小さな書店を開業すること自体がとても難しい。ましてや、小さい洋服屋の一角にちょっとだけ本を置きたいという人が取次に連絡しても、ほとんど相手にしてもらえないというのが現状です。本を面白がってくれる人を増やしたり、本の新たな可能性を考えたりしていく上で、いつも最大のネックになるのは流通の問題です。

―ノーリスクである程度まとまった初年度売上が見込めないと、取次も対応しづらいかもしれません。

僕が仕事を始めるきっかけになった「TOKYO HIPSTERS CLUB」は、ワールドというアパレル大手が運営しています。ワールドは当時すでに、日販との書籍流通口座を持っていた。ところが、本を置きたいという希望を持っている他の小さい会社が口座を開設するのはとても難しいので、別の方法を模索していました。
古本だけで売り場をつくったり、十数社の出版社にしぼって全部個別に直取引のお願いをしたり、無理いって中取次の会社をご紹介いただいたり。とても苦労していたんです。
そうしているうちにたまたま知り合った、取次の太洋社の方に相談したところ、その子会社のウォークという会社と一緒に、いろいろやってみようかということになったんです。
今までも、小さな洋服屋や雑貨屋さんが大手取次に相談するケースはたくさんあったはず。でも、資金面とか商売事情の問題でこれは無理ですね、と終わることが多かったんじゃないかと思うんですよ。
そして、大きいのは異業種同士なので商売の常識が違うということ。たとえば洋服はシーズン商品ですから、買切って売れ残ったらセールで売る、というのが基本です。そこに、委託販売で返品ができるけど、利益が2割しかなくて値引きもできない、という商品がなじまないのは当然ですよね。

―出版業界の常識は他業界からすると非常識なんですよね。

本の業界の常識だけではなく、たとえば洋服屋なら洋服の常識、アパレル業界の常識を知った上で仲介に入って、お互いのメリットをきちんと見出して設定できる人間が必要なんです。そうしないと話が進まない。
洋服屋の側には、利益率の低さやセールができないことに関して、それで仮に単位面積あたりの効率が洋服やアクセサリーよりも悪くても、ブランディングということも含めて中長期的に考えれば充分価値があります、という話をする。一方で取次の側も今のビジネスだけをやっていては難しいという危機感をもともと持っているので、こういった異業種との取り組みはたとえ最初の売上が小さくても、実験していかなければいけないと思います、という話をする。もちろん、そこではぼくが継続的に魅力的な売り場作りを心がけて、少しずつでも売上をあげていくというのは大前提です。

―流通系企業のチャネル開発部署の人以外でも、このような仕事をしている人が増えてるんでしょうか?

少なくともぼくは聞いたことがありません。まず短期的な、目に見える利益に結びつきにくいという課題があります。少なくとも、取次と呼ばれる企業が長年取り組んでいる物流卸というビジネスの枠組みからみたら「全然お金にならない」と一蹴されてしまうでしょう。
ところが、アパレルの側には比較的古くからプランディングという考え方が根付いています。ある意味、本があることによってその本の世界観を通してお客さんに店のブランドイメージを伝えることができればそれでいい、というふうに考えます。本があることによって、本が洋服のイメージを勝手に語ってくれるから。
そして、競合店との差別化も図れます。ですから、僕はいまのところ、取次や出版社からではなく洋服屋さん側から、本の売上に対してではなく、お店のブランド全体に対して本を中心的な媒介として関わりながらディレクションをする、ということでおカネを頂いています。なのでウェブサイトやDMなどのディレクション、店内での展示に関するお手伝いなどを含むことも多くあります。

―アパレルよりも単価が低い消費財を売る小売店展開の可能性は?

本を売ることでペイしなければならないとなると、現状の利益率のままでは難しいですよね。
薬屋さんの店先などに、中取次さんを通して置いた本を売るというのは昔からありました。
ただ、あれもあくまでオマケ程度の利益を得るためのものです。本格的にやるとなると、お店側にある程度の本や書籍MDに関する知識も必要でしょうから。今後あり得るとすれば、ブランドを重視するコスメ系の小売店なんかでしょう。

―いずれにしても、芽が出るまで時間がかかるんじゃないですか?

僕個人としては、まずは「いままでに見たことがない、人が本と出会う場所を生み出す」ということそれ自体に価値があると思っていますから、おもしろいと思えば全くお金をもらわないで仕事をすることもあります。ふつうなら企画段階で「儲からないからやめよう」ということでなくなってしまうようなものも、たとえば僕がお金をもらわなければ、一時的であれ世の中にそれを生み出すことができる、ということがある。だったらまずは生み出したほうがいいよね、という考え方が根本にあります。新しいものであればあるほど、ビジネスになるのはそれからあとです。




 

ページのトップへ

次へ 前へ
連載目次へ

このサイトは、インターネットエクスプローラー(Microsoft Internet Explorer) Ver.5.5 SP2以上でご覧ください。

ebookjapan