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本と本屋さんの夕日

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プロフィール:永江朗(ながえ・あきら)
1958年5月9日、北海道旭川市生まれ。
洋書輸入販売会社に勤務したのち、フリーランスのライター兼編集者に。1993年よりライターに専念。現在、「週刊朝日」「エコノミスト」「ダ・ヴィンチ」「朝日新聞」をはじめ、数多くのメディアで連載中。
主な著書に、『菊地君の本屋』(アルメディア)、『不良のための読書術』『アダルト系』(以上、ちくま文庫)、『インタビュー術!』(講談社現代新書)、『〈不良〉のための文章術』(NHKブックス)、『メディア異人列伝』(晶文社)、『話を聞く技術』(新潮社)など多数。近著は『本の現場』(ポット出版)
現在、早稲田大学文学学術院教授。同大文化構想学部にて出版文化概論講義を担当。

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コラム 2009/08/31
第29回 読書世論調査データで検証する「読書離れ」のウソ(1)
出版不況の本質とは


当連載の第3回で、マスメディアで囁かれる「馬鹿になった若者の読書離れ」説はウソであることを説明しました。
コンピューターとインターネットの普及により、以前とは比較にならないほどの量の情報を摂取することに長けた若者が本を読まなくなるはずはありません。1950年代、60年代の若者に比べるとケタ違いに読んでいる。

それではなぜこのような根拠薄弱な説がマスメディアで支持されてきたのか?
今回はその原因について考えてきます。
まずは活字離れと読書離れの定義について整理します。

・活字離れ=新聞、雑誌、書籍との接触が減る現象 
・読書離れ=書籍(雑誌)との接触が減る現象 

本はコンピューターでできていることを前回も説明しました。
もう「活字」の本はほとんどないので、活字離れについて考える必要はありませんね。「文字文化」離れといったほうが正確かもしれません。
それではなぜ読書離れが問題にされるのでしょうか。
これは、日本国民の知的能力が低下しているんじゃないかという議論からくる錯覚だといえます。

2003年にOECD(経済協力開発機構)が実施した学習到達度調査(PISA)で、日本の順位が低下したことが「「馬鹿になった」若者の学力低下論に火をつけました。そこでてっとり早く連想されたのは学力=読書量ということです。日本では、読書=教養=知的能力というイメージ、幻想が根強くあります。若者が読書離れしていることが知的能力の低下、しいては学力低下につながっているのではないか。

しかしこの説の根拠となる統計データはどこにもありません。
国内で、統計学的手法にもとづいて長期間継続的に行なわれている統計データといえるものは毎日新聞読書世論調査と家の光農村読書調査のみです。
ただし家の光の調査対象は農村部だけですから、実質的には毎日新聞読書世論調査だけといっていい。そもそも、マーケット不在の出版産業においては統計データから判断するという商習慣すらなかった。
「読書離れ」は、「凶悪犯罪が増えている」「青少年の犯罪が増えている」と同じような、感覚的な意見でしかありません。

唯一の統計データといえる毎日新聞社 読書世論調査は1947年に開始されました。
戦前からあった読書週間の行事が戦争の影響でいちど廃止され、47年に復活されたとき、雑誌「サンデー毎日」創刊25周年を記念して良書選択の指標となる賞を目的として毎日出版文化賞を創設しました。読書世論調査はこれと時を同じくして調査が開始されたのものです。
とうやら「良書」というキーワードがこのときからつきまとっています。
読書世論調査の調査方法としては、16歳以上の4800人対象を対象に層別2段無作為抽出法と留め置き法を並行して採用しています。
具体的には、全国の市町村を大都市・中都市・小都市・町村部の4つの層に分け、各地点の住民基本台帳から1地点16人を抽出、調査員が戸別訪問して質問用紙を渡して回収し結果集計を行います。
それでは、読書世論調査でみる読書率の変化をみていきましょう。

◎読書率の推移表(1950年~05年) 
総合読書率

    ※総合読書率推移(書籍+雑誌)
書籍読書率

雑誌読書率



注目すべきは書籍読書率ですが、
2005年に、調査開始以来最高の51%を示しています。
読書離れ説とは真逆の結果ですね。
調査開始直後の1950年には6人に1人ぐらいしか読書をしていなかったのが、半世紀後の2005年には2人に1人が読書をするようになった。一方で、2005年の雑誌読書率は50年前の水準に戻ってしまっている。5年前に8割の人が雑誌を読んでいたのが、2割以上も落ち込んでいる。

直近のデータである2008年の読書世論調査を見ても、
書籍読書率は過去最高クラスの58%を記録しているのに対し、雑誌読書率は63%と低迷を続けています。

◎80年代以降の読書率の推移(1981年~08年) 

          80年以降総合読書率
80年以降総合読書率

          80年以降書籍読書率
80年以降書籍読書率

          80年以降雑誌読書率
80年以降雑誌読書率


統計データを見る限り、読書離れの本質は「本離れ」ではなく「雑誌離れ」だといえるでしょう。
本を読む人はむしろ増えていることがわかります。
出版不況の本質は雑誌離れ現象であって、読書離れではなかったのです。




 

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