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本と本屋さんの夕日

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プロフィール:永江朗(ながえ・あきら)
1958年5月9日、北海道旭川市生まれ。
洋書輸入販売会社に勤務したのち、フリーランスのライター兼編集者に。1993年よりライターに専念。現在、「週刊朝日」「エコノミスト」「ダ・ヴィンチ」「朝日新聞」をはじめ、数多くのメディアで連載中。
主な著書に、『菊地君の本屋』(アルメディア)、『不良のための読書術』『アダルト系』(以上、ちくま文庫)、『インタビュー術!』(講談社現代新書)、『〈不良〉のための文章術』(NHKブックス)、『メディア異人列伝』(晶文社)、『話を聞く技術』(新潮社)など多数。近著は『本の現場』(ポット出版)
現在、早稲田大学文学学術院教授。同大文化構想学部にて出版文化概論講義を担当。

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コラム 2009/04/17
第1回 平成生まれでもよくわかる現代出版文化論講座開講!


「出版文化論」とはいささか大げさですが、わかりやすく言うと、「人と本とのかかわり方」について考える時間です。

いま出版文化は大きな転換点にあります。
ひとつは、日本の個別かつ特殊な事情によるものです。書籍の出版点数が急激に増大して、流通や市場(つまり読者)がそれに対応しきれていないために、さまざまな歪みが起きています。

もうひとつは情報科学技術、とりわけコンピューターとインターネットの発展と普及によって生じたもので、印刷メディア(書籍、雑誌、新聞など)の地位の低下です。つまり本の世界では10年前、20年前の「常識」が通用しなくなってきているのです。

この連載では、現在の出版文化が置かれている状況を概観するとともに、これまでの出版文化の中から継承していくべきものと、変えていくべきもの、そして新たにつくり出すべきものについて検討していきます。
新刊書店で販売される新刊書についてだけでなく、雑誌や古書、ミニコミ、自費出版物、電子出版なども視野に入れて考えます。

従来の出版文化論では、とかく書物の内容にのみ視線が注がれる傾向がありました。このコラムでは、書物の内容にも注目しつつ、出版物にかかわるさまざまな仕事、さまざまな人に焦点を当てて、現代の出版文化を考えます。
すなわち、本を作る出版社(編集者)、本を流通させる取次、本を読者に手渡す書店などです。古書店や図書館、あるいは個人で本を紹介するブロガーも含まれるかもしれません。

●流通の自由なくして言論・出版の自由なし

「流通の自由なくして言論・出版の自由なし」
という言葉があるように、いわゆるコンテンツだけでは出版にも文化にもなりえません。「書いた人」だけでなく、「書かせた人」や「流通させる人」「保存する人」、さらには「読む人」「蒐集(しゅうしゅう)する人」の存在にも注目しながら、現代日本の出版文化について考えていきます。 

また、このような状況の中で、われわれはどのように書物とつきあうことが可能か、本の手に入れ方や読み方、整理方法・処分方法などについても、次回からできるだけ具体的に綴っていきます。

たとえば私たちの読書生活のなかでもっとも身近な書物である文庫と新書。
これによって出版界はどのように変わったのでしょうか。
価格破壊商品としての文庫、究極の簡素化商品としての新書、大都市の通勤電車文化と文庫・新書など、さまざまな視点が考えられます。
文庫・新書そのものも、歴史を振り返ると変化を繰り返してきたことがわかります。
また、出版社経営の観点から文庫・新書をながめると、現代出版流通システムの問題点も浮かび上がってくるでしょう。
あるいは原稿用紙。ほとんどの書き手がコンピューターのエディターやワードプロセッサーで原稿を製作するようになった今も、400字詰め原稿用紙が計量の単位として生きています。
この日本独自の文房具がなぜ生れ、どのように変化し(夏目漱石が『坊っちゃん』を書いた原稿用紙は400字詰めではありません)、どのような理由で手書き絶滅時代の今も残るのかを考えると、近代日本出版文化のある面が見えてきます。原稿用紙だけでなく、テーマを文房具一般に拡大すると、出版文化の広さがわかります。

さらには出版広告と出版文化。発行部数1千万部の全国紙に、発行部数わずか3千部の書籍の出版広告が載ります。これはどういうことなのか。
本は誰のために書かれ、誰のために流通するのか。小さな新聞広告一片から、出版文化の本質が見えてくるでしょう。

紙に印刷された書籍・雑誌は、そう遠くない将来、電子メディアに取って代わられるという説もあります。
実際、辞書類の一部は電子辞書になりましたし、電子メディアに移行した学術誌も少なくありません。
では、紙の書籍や雑誌は完全になくなってしまうのでしょうか。それとも一部は残るのでしょうか。残るとすればどんな書籍・雑誌が残るのでしょうか。
この連載では出版文化と電子メディアの関係についても掘り下げていく予定です。


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